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新刊コーナー 

川口順子著
『再会』

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

吉田調書の真実

原発事故と巨大地震の正体

 

 

 

 

 

                                           

 

 

 

      「葦ブックス」廃止について                                  

既刊本コーナーとは別に、「葦ブックス」という新コーナーを設け、随時、在庫本のご紹介をするとのお知らせをしておりましたが、点数が増えてきますとジャンル分けして掲載することになりますので、既刊本コーナーと変わらないことなりそうだ、ということに気がつきました。それならば無駄にページを増やさずに、既にある既刊本コーナーを整備しながら使うべきではないかとの結論に至った次第です。
ということで、「葦の葉通信」に掲載しております書籍の広告も、既刊本コーナーの当該書籍の解説に直接飛べるように、リンクを貼り替えました。
新刊は新刊コーナーにてご紹介させていただきます。

 

●新ご紹介

 

 

川口順子著
四六判上製・209頁・1500円+税
ISBN978-4-7512-0867-0
2016年5月3日発行
 

電子書籍版も発売!

 

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800円(税込)

ISBN978-7512-0868-7(電子)
 
 
 著者75歳。今なお現役で法曹関係のお仕事を
続けておられるが、終戦前後から始まる
過酷な体験と、生来的とも思えるほどの、
一所定めを拒む漂泊する魂を抱えて煩悶する
自身の半生を核にしつつも、私的な回想記と
は全く無縁の、思索的格闘小説ともいうべき
出色の作品。
 
4人の子の母であることに無上の喜びを感じつ
つも、なおも漂泊への思い断ちがたく、世界に
対する孤絶感に煩悶する主人公。この主人公に
とっては、救抜となりうる契機とは何か。
著者が自らに課したこの問いに向けて書き上
げたのが、この作品である。
 
近年の小説の傾向からするならば、ページ数は少ない部類に入るが、昨今、絶えて久しい人
生の煩悶に、豊かに肉付けしつつ作品化したもの。英国留学の経験もある著者の硬質な文体
が、余分な描写を省く筋肉質な作品を可能にしており、読み出したら止まらない。時折り登
場する自然描写もすばらしく、その筆力と自然への感応力には驚かされる。老いの恋愛に関
する深い洞察も読みどころの一つ。
 
 

再会・目次

 

第一章 ふい撃ち

第二章 五十年後の再会

第三章 敗戦

第四章 破滅と彷徨

第五章 母性の衝撃

第六章 英国留学と愛国

第七章 老いの本能と破調

第八章 共棲

第九章 残照の抱擁

あとがき

 
 

『再会』 冒頭部分を引用します。

 

「 手ぬかりなくやった。最初の発作の時のように動転もしなかった。

 外はすでに闇、シェルターの内部にも似た人気のない通路に押し出され、取り留めなく行き来しながら、妻が発作を起こしてからの自分の動きを反芻している。

 不意に倒れる椅子の音で立ち上がり、どさりという鈍い音に、もう台所へ向かって走っている。

 再発作については、警告もされていた。

 大学を卒業した地で、つつがなく、地味に県立高校の英語教師として勤めあげ、退職後は、母の介護のために故郷に帰り、その地で乞われるままに私立高校の講師の職に就いた。妻の最初の発作の後、四十数年に及ぶ教師生活を終えている。

 就職、結婚といった幾分華やかな彩りがなければ、これといって挙げるほどもない、平凡な七十年のうち、唯一の大事件が、妻の脳梗塞発作であった。

 再発作に至る、起こりうる事態についての構えが万全であったかどうかは分からない。

 気管を切開することへの同意を求められ、次いで落ち着きましたという医師の説明を受けて、治療室に入ると、いくつもの管に取り巻かれて妻が横たわっていた。血の気のない顔の、頬の盛り上がりと、鼓動を告げるモニターが、生命の証を伝える。しかし、機械を通したパコパコという、不気味な無機的な呼吸の音と、微動だにせず、棒のように横たえられた体から伝わるものは、妻が、もう最後の過程をたどっている事実だった。

 

 待つだけが私の仕事となったのを悟る。

 再び通路に出て、初めて気がついて、壁際に置かれたベンチに深く腰を下ろした。

 途端に、公園で私に投げられた妻の鈍く光る眼、厳しい眼が、脳裏に浮かぶ。

 いつも通り、車椅子を、ベンチを中心に声高に話し込んでいる老婆の集まりに寄せていく。私は、少し離れた石の上に腰を落とし、持参の本を手に、妻の気晴らし、公園仲間との談笑に付きあって、いつものように小一時間を割くつもりである。

 ふいと目を上げたとき、こちらに投げている妻の視線に出会う。その敵意を秘めた鈍い光に驚いて、反射的に、何だと無言で問いかける。四十年にわたる妻との生活で、見たこともない、思いがけない眼の色合いに戸惑っていた。 

 

 リハビリの後に、麻痺した体が、これ以上には戻らないと知ったときの妻の絶望は大きかった。杖を突いて少しの距離は歩くことができる。しかし、外に出ること自体をひどく嫌がる。無様な姿を稽古事仲間に晒すのは、さらに耐え難いらしく、私は、彼らの訪問も謝絶するしかなかった。

 自身の肩からぶら下がった、無用の長物のように成り果てた腕を持っては、葱一つまともに刻めないのに苛立つ。室内を移動しているときですら、まるで他人のもののように言うことを利かない足が、何かに引っかかって、彼女の歩行を妨げ、あるいは、倒れ込んでしまう。そうした場合の彼女の起こす癇癪は、以前の落ち着いた立ち居を知っている私を驚かした。」

 


●続きは是非とも本書をご購入いただきまして、お読みください。

ご注文

 

 なお本書は2016年5月3日発行(法律家の著者に敬意を表しての発行日)で、4月の中頃に出来上がっていたのですが、うっかりしまして、販売するためのデータ登録の手配が遅れまして、しばらく「近刊」との表示にしておりました。著者及び読者の皆様にお詫び申し上げます。 

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