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川辺川ダムと九大跡地 9/26

 

川辺川ダムと九大跡地 9/26 
9/27↓ 9/29↓

 

熊本県の蒲島知事が川辺川ダムの建設中止を決定しました。自然に優る宝なしとの思いが中止決定の最大の理由であったとの知事の言葉は、誰もが納得できるものではいかと思われます。しかしダム建設に反対しながら立ち退きを余儀なくされた五木村の人々は、知事の中止決定に抗議しています。ダム建設中止決定は、川辺川ダム問題の新たな始まりではないかとも思われます。今ここで改めて、なぜ川辺川ダム建設が強行決定されるに至ったのか、その歴史を振り返ることは非常に意義のあることではないかと思います。小社刊の関連図書をお勧めする次第です。

福岡賢正著 
国が川を壊す理由 誰のための川辺川ダムか 
1800円+税 B6 240頁

熊本日日新聞編集局編 
山が笑う村が沈む ダムに揺れる五木の人々 
1800円+税 四六 308頁

海有一著 
子守唄の里から いまダム建設が問いかけるもの 
1500円+税 四六190頁 

 

裁判所、検察庁移転反対!
先日、熊本県の蒲島知事の建設中止決定の英断を受けて、上記内容の文章を添えて当社刊の上記3点を、FAXにて関連地域の書店さんにご案内いたしました。しかし川辺川ダムの問題は、関連地域やその周辺の住民に直結する問題であるだけではなく、すべての人々に直結する問題でもあります。川辺川ダムは、貴重な自然を破壊しつつ政府が進めてきた、不要な、あるいは過剰な国土開発政策を象徴するものだからです。

ダムや海の埋め立てなど、消滅させれば二度と回復不可能な自然破壊は、今もその動きはつづいています。諫早湾の埋め立て(こちらは農水省管轄)もその無惨な例の一つですが、福岡市で目下大問題になっているアイランドシティもその一つです。川や海は人間の手で人工的に造り出すことは不可能です。海を埋め立てると、消滅するのは景観だけではありません。埋め立てた面積の何十倍、何百倍もの、海が育んできた様々な資源が消滅します。なぜ海までを壊すのか。

福岡市では博多湾の埋め立て地アイランドシティに、こども病院を移転することが市議会で正式に決定されたとのこと。昨日の新聞に報道されていました。吉田市長の提案どおりに進んでいるわけですが、吉田市長は、山崎前市長が手がけたアイランドシティの開発そのものを見直すことを選挙公約に掲げて当選しました。しかし市長就任後は、進行しつつある事業を全面的に見直すのは難しいと、一部方針を転換し始めました。こども病院移転はその流れの中から出てきたものです。

ところが驚いたことには、今朝の新聞を見ると、福岡市の中央区六本松にある九大の跡地がURに売却されて、跡地開発がURに全面移譲されることが決まったとの記事が出ていました。競争入札なしのURへの単独移譲だとのこと。九大跡地は国有地ですが、独立行政法人化後は売却先の選定などは大学の裁量になっています。九大の話によると、福岡市の要望で競争入札はせず、URを専任したという。非常に不可解かつ不透明なな経過を辿っていますが、こども病院移転反対の親たちは、九大の跡地をこども病院の移転先の一つとして市に要望を出していました。しかし地価が高いとのことで市はこの要望を拒否。予定どおり、人工島のアイランドシティへの移転をあっという間に決めてしまいました。その直後の九大跡地利用のURへの全面移譲決定の報。余りにも不自然なほどの符牒の合いよう。背後に何か不可解な動きがあるのは明らかです。

九大の跡地には、裁判所や検察庁や弁護士会館などの法曹関係の建物が一挙に移転され、それぞれ同じ敷地内に隣接する構成になるらしい。検察と裁判所がお隣さんになっていいのかしらと思いますが、今はこの問題は脇へ置きます。九大跡地利用のさらなる不可解さは、法曹エリアの横に同じくらいの広いスペースを使って、商業施設を建設することになっていることです。

騒々しい商業施設と、静けさと落ち着いた雰囲気が求められる法曹エリアとをセットにして開発するとは、余りにも異様!法曹エリアの横にこども病院を建設すれば、交通の便も非常によろしいのはいうまでもありませんが、こども病院に最も望まれる静けさと落ち着いた雰囲気も同時に確保できるという、最良の環境です。誰が考えても最も妥当なこの案が拒否され、この異様な案が知らぬ間に決められた裏には、おそらく国交省の働きかけがあったものと思われます。

URという国交省管轄の独立行政法人に全てを委ねたことが、まずその推測の根拠の一つです。しかも裁判所の移転や跡地の整備までもが、全面的にURに委ねられています。不可解至極ですが、福岡市が単独でURを選定する理由は思い浮かびません。誰が考えてもありえぬ組合わせです。このありえぬ組合わせを強引にやったのが、国交省だと思われます。

では福岡市はなぜこの国交省の案に乗ったのか。アイランドシティや福岡市内の新たな開発を、国交省が持ちかけたからではないかと思われます。どこに書いたのかはすぐには探し出せませんが、わたしがこども病院のアイランドシティへの移転問題を最初に取り上げてからしばらくして、冬柴大臣時代の国交省がアイランドシティを国際物流拠点にすることを福岡市に持ちかけています。新聞の小さな記事で見たのですが、わたしはこれでこども病院のアイランドシティへの移転は変更されるかもしれないと思いました。しかし、この人工島には前市長時代に、新しい教育モデルにするとの方針で市立の小中一貫校が開設され、周辺には住宅やマンションも建設され、文教地区、生活エリアが形成されています。こんな所に国際物流拠点が造られるとなると、平安を乱すばかりか、治安、衛生などの面でも危険度が増すと危惧していました。

福岡市はまさか両者を、この人工島に併設するようなことはしないだろうと思っていました。ところが、先日この人工島に毒蜘蛛のセアカコケグモが大量に発見されました。この毒蜘蛛ニュースで初めて、人工島にはすでに国際物流港ができていることを知り、驚いています。毒蜘蛛が流入してくるのもむりからぬこと。しかしこの物流港がいつ造られたのか、この間、まったくどこからもそのニュースは伝わってはいません。国交省は福岡市に話を持ちかけると即建設に着手し、すでに稼動しはじめていたのか。それにしては時間が短すぎるようにも思われますし、いくら何でもマスコミが全く報道しないということもないはずです。となるとすでに早くから国際物流港が造られていたのか。では吉田市長は、こんな所にこども病院を造ろうとしているのか。

国交省は、道路や橋だけではこの先建設関連事業の拡大は望めぬと見たのか、各地に国際物流拠点を造るという新たな利権を生み出そうとしています。福岡市の人工島もさっそく目をつけられたのでしょう。しかし福岡県には既に北九州に、小泉自公政権時の経済特区政策で立派な国際物流拠点が造られています。しかしここは利用が予想をはるかに下回り、赤字続きらしい。北九州のこの物流拠点も国交省の事業のはずで、赤字事業に対する反省の全くないまま今度は、距離的にはさほど離れていない福岡市にも同じような施設を造ろうとは、呆れ果てた話です。国交省の仕事は、対外的な部門以外はすべて都道府県に移譲すべきです。それ以外には、この役所の異様なムダ遣い体質の解決方法はないはずです。

しかしこれだけではなぜ国交省が福岡市と結託して、九大跡地の異様な利用を策定したのか、その謎は十分には解明されていません。この問題の異様さとURは非常に密接に繋がっています。つまりURを使わなければ、これほど異様な九大跡地利用策は作られなかったであろうということです。さらに言えば、ある特定の勢力がURを牛耳って、URを使って九大跡地利用と裁判所跡地整備までをも一手に利権化したということです。しかも従来の政治利権と異なり、この移転を利用し、法曹界を質的に転換させようとの恐るべき企みをも同時進行させようとしています。法曹界に抱くイメージをまず視覚的に破壊する。騒々しい商業施設と隣接させる案は、その具体化の一歩です。

法曹関係の移転事業を、URがここまで完全に牛耳っているということは、貴重な裁判資料の数々も、移転時にひそかに外部に持ち出される可能性もありうることも否定はできません。当社が移転時に被った様々な被害と同様の被害が、法曹関係の移転時にも起こりうるであろうことは、声を大にして強調しておきます。

ではURを牛耳っている勢力とは誰かということになりますが、国交省に影響を行使しうる人物であり、勢力ということになります。しかも従来の利権漁りとは全く質を異にする、異様な側面も有しています。元々どこもかしこも問題が頻発していたとはいえ、数ある省庁の中で、近年最も異様な変りようをしたのは厚労省であるということは、ここ最近マスコミが繰返し報道してきた通りですが、この間厚労省は、公明党の坂口大臣が5年もの間、完全に独占してきました。国交省も3年ほどの間、公明党が独占してきました。

あらゆる所に人材を送り込んでいる創価学会ですので、3年ぐらいでは国交省全体を完全掌握することはできなくとも、例えばその下部組織のいくつかを完全掌握することはさほど難しくはないはずです。一般の政治家や官僚にとってはURはさほど大きな利権ではないはずですが、創価学会のような組織にとってはURを牛耳るということは、団地を配下に置くことになり、様々な利用の仕方も可能になります。しかもURには、新規建設の巨大事業のほかにも、既存団地の修繕のための工事が年中途切れることなくあります。単価は安くても、数が膨大であり、労せずして仕事が次々と生まれてきます。創価学会は建設会社も傘下に持っていますが、我田引水しているかどうかまでは分かりませんが、この公団の日常的な工事は、弱小の建設業者を取り込むには格好の利権になりえます。自民党にとっては利権にもならない仕事でも、創価学会にとっては勢力拡大のための格好の利権になりえます。

誰も目をつけない、競争倍率ほぼゼロの所に目をつけて食い込むことは、創価学会にとっては非常に簡単で、得意技のはず。

という背後霊を想定すると、九大跡地利用の異様な計画案の謎も解けてきますが、こんな案を放置しておいてよろしいのか。ことは病気に苦しむこどもの安全を脅かし、わが国の法曹の形まで変えかえぬ重大問題です。(9/26 久本福子)

しかしそもそも、なぜ裁判所や検察庁を移転させなければならないのか。昨日は新聞記事を見た直後だったということもあり、わたしもつい法曹群移転を既定のこととして、それを前提に書いてしまいましたが、冷静に考えると、そもそもの出発自体が非常に不透明です。事実、移転の根拠は未だどこからも示されていません。九大跡地の利用問題が出てきて突如浮上してきたもので、跡地を利用するために法曹全移転が急遽決定されたのは明らかで、そもそもの出発が倒錯しています。どこがどのような論議を経て決定したのか、国と九大と福岡市は国民と福岡市民の前に明らかにせよ。医療や福祉関係予算を削りつづけているというのに、なぜ莫大な税金を投じてこの大移転を強行するのか。そんな余裕があるのならば、国はこども病院を九大跡地に移転するための費用として補助せよ。さもなくば、極力高額で売却するために、跡地開発は競争入札で実施せよ。跡地は国有財産であり、跡地利用も売却も、国民に資する形で実行されるべきです。

現在の裁判所は広大な福岡城址のはずれにあり、城址の緑を借景にしていることもあり、これ以上裁判所にふさわしい場所はないと思われるほどの、落ち着いた雰囲気と静けさに包まれています。その上交通の便も九大跡地よりもずっとよろしい。弁護士会館は裁判所に隣接した所にあります。検察庁は同じ中央区にありますが、裁判所とはほどよい距離で離れています。なぜ莫大な国税を投じ、この関係を変えなければならないのか。

裁判所の跡地は、これまた莫大な税金を投じ、URに委託して公園として整備するという。公園として整備するということは、今ある自然の自然さを破壊することに他なりません。整備し過ぎた自然は、城跡の雰囲気を壊しかねません。神戸で死者を出すに至った川辺の公園化も、自然に過剰に手を加えすぎて水流の不自然な流れを造り出したことが原因だといわれています。国が旗を振りながら、環境、環境と叫んでいながら、一方平然と莫大な税金を投じて自然破壊を進めています。この矛盾をどう説明するのか。国、福岡市にはもとより、九大にも国民に対して説明責任があるのか明らかです。

財政が逼迫しているとして国民には負担を強いながら、まったく切迫した理由のない法曹群移転を強行するのか。法曹群移転は中止せよ1(9/27 久本福子)

●9/29  大事な事を書き忘れていました。以前、福岡市の「市議会だより」に、公明党の市議が、後期高齢者の保険料問題を巡り、福岡市で救済せよと求めていたことを報告いたしました。公明党はこの悪制度を作った張本人であるにもかかわらず、まるで一切無関係のごとき発言をしている公明党の無責任さを批判しましたが、その後、「市議会だより」からは、党派別の発言は掲載されなくなり、どこがどんな発言をしているのか、全く分からないような掲載の仕方に変ってしまいました。公明党を筆頭にした政党からの圧力があったものと思われます。批判封じは公明党、創価学会の得意技ですが、新聞記者出身の福岡市長がこの言論封じ圧力に易々と応じたのでしょうか。信じられぬことですが、公正中立であるべきはずの市が、広く市民に広報すべき事実をその通りに広報することを止めてしまいました。日本は独裁国家ではなく、複数政党制による民主主義国家のはずですが、それは選挙の時だけではなく、選挙後の各政党の活動が、選挙公約をどこまで果たしているのかという、日常的な政治活動にまで民主の目が及ばなければ、民主主義の実質は保証されません。本当に驚くべき変りようですが、この背後には、九大跡地利用問題が絡んでいたのではないのかという新たな疑惑も浮上します。九大跡地問題の背後に公明党、創価学会の影ありとの疑惑もさらに濃厚になってきました。(9/29 久本福子)

川辺川ダムの是非を問う! 05/9/17 10/3↓


第2版1998年2月刊/四六判上製/240頁/1800円+税

ダム建設はほんとうに必要なのかどうか。39年経った今も、この根本問題が決着していないことをあらためて浮き彫りにする結果になりましたが、国交省が川辺川収用申請の取り下げを決定しました。「だれのためのダムなのか」。本書の根本テーマですが、毎日新聞記者である著者が、綿密な取材に基づくデータを駆使して「ダム」をめぐる実態を明らかにしたものです。初版は1994年に「いま、地方を考える」シリーズ第6巻の『国が川を壊す理由』として刊行されました。上掲本はその増補版として、1998年に単行本化して刊行されたものです。

2003年1月刊の『子守唄の里から』も、川辺川ダムの是非を、倫理の問題として問いかけたものです。(05/9/17 久本福子)

山が笑う村が沈むをご紹介するのを忘れておりました。確か今年の春頃新聞の書評で紹介されていましたので、東京の新風舎から文庫本も出ているようです。ただし、当社には1冊の献本すらもなく詳細は不明。版権をめぐる対応では出版社によって随分違うことに驚いています。当社刊の本書の在庫は十分にあります。(05/10/3)

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