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2018/6/1
人間公害、籠池夫妻

久本福子

 

 先週は風邪を引いて体調が悪く、数日新聞を読まない日が続いておりましたが、そのまま「アメフト、三題噺」を書き、公開しました。後で、たまった新聞を片付けながらざっと目を通していたところ、24日の読売新聞に、「森友」交渉記録の要旨(会員登録が必要)が、1ページ全紙を使って掲載されていましたので、すぐさま目を通して卒倒するほど驚愕しました。野党の批判やマスコミ報道を全否定するような内容だったからです。前回ご紹介した「LITERA」の記事は、「安倍夫妻案件」疑惑捏造に役立ちそうに意図的に誤読して書いたものであったわけです。おそらくこの著者は、文書の原文には全く目を通さずに、誰かから提供されたネタをそのまま使って書いたのではないかとさえ思われます。原文を読んだかのような偽装工作をしながら捏造記事をかいているだけに、その悪質さの度合いはさらに大きい。前号のこの捏造記事へのリンクを消そうかと思いましたが、読者に注意を促すために悪見本として残すことにしました。

 では、森友交渉記録には何が書かれていたのか。読売新聞に掲載されている要旨だけでも、この問題の本質を理解するには十分だと思われますが、この記事がきっかけで財務省が関連文書(財務省・森友学園決裁文書)を公開していることを知り、直接原文にも目を通しました。4,000ページにも及ぶという原文全てに目を通すのは時間に制約のある人間には不可能ですが、一部に目を通しただけでも、これまで野党はもとより、マスコミも一切報道してこなかったこの事件の全体像が明らかになってきました。読売の要旨でも触れていない、基本の基本から紹介することにいたします。交渉に当たったのは、籠池夫妻ですが、以下には、「学園」と表記しています。

1 まず、問題となっている豊中市の国有地は、伊丹空港への飛行ルートになっていたことから騒音被害が発生し、その対策として被害地住民が移転。その跡地を大阪航空局が購入し、所有していたもの。(なぜ大阪航空局がこの土地に絡んでいるのかという疑問が、これでやっと解消。)
 その後騒音被害地域が縮小したことから、大阪航空局が近畿財務局に土地売却を依頼。公募したところ、2013年6月8日、森友学園から購入の申し入れがあり、同学園は9月2日に土地取得要望書を提出。

2 ただしこの土地は、豊中市が土壌汚染地域として指定している地域を含んでおり、地下には産業廃棄物も埋設されているいわく付きの土地であったが、売却は現状渡しで、土壌汚染対策も、地下のゴミ撤去も買い主側で実施し、国は行わない旨を明記して、関連資料を添付して公募した。また土地を利用するに際しては、汚染土壌を撤去して、豊中市の審査を受ける必要のあることも明記。

3 森友学園は上記のような条件を承知の上で購入申込をしたのですが、随意契約を希望。学校用地という公共性にかんがみ、随意契約が認められる。ただし、大阪府が小学校開校を認可しないかぎり、売却はできないことを近畿財務局は森友側に何度も明確に示す。大阪府の審議委員会は、森友学園の資金計画が不明であることを主たる理由として、認可を保留。

4 土地の売買交渉は継続し、学園側は資金不足ゆえ、8年ほど賃貸した後、学園側が買い取るという方式にしてほしいと、繰り返し近財局に要望を出す。近財局としては土地は貸し付けではなく、売却する方針であったが、学園側の要望を特例的に受け入れ、買い取りを前提とした貸し付け方式(定期借地及び売買予約による処理)を認めることとした。(2014/6/2)
 また、通常の定期借地とはせずに事業用定期借地とした。通常の定期借地契約では、借り主の権利の方が強く、借り主がその権利を行使したときは国は対抗手段がないことから、事業用という条件を付けたという。「特例」にはこの意味も含まれている。
 この土地をめぐっては、「特例」という言葉だけを取り上げて、あたかも昭恵夫人や安倍総理の依頼によるという意味での「特例」だと勝手に解釈して、安倍総理攻撃材料の根拠の一つにしていましたが、交渉記録を初めから読んでいくと、これまで前例のない、買い取りを前提とした事業用定期借地方式という意味でしか使われおらず、この方式の意味での「特例」という言葉は多数登場しています。

5 売買方式は決まったが、大阪府からの認可はなかなか下りず、学園側は、府の認可が下りる前に契約書を交わしてほしいと、新たな特例措置を何度も要請するが、この要請に対しては、近財局は明確に拒否。さらに、認可が下りない場合を想定して、契約解除条項を追加したところ、学園は猛反発。

6 買い取りを前提とした貸し付け方式という特例措置を取る際に示した、買い取り金額と貸付料について、高すぎるのでもっと減額してほしいとの学園側の要望が、執拗になされる。近財局は、買い取り金額は買い取り時点での時価で決まることを繰り返し説明する。土壌汚染対策費用やゴミ撤去費用は、その結果土地の価値が上がり、買い主利益になるので、買い主の負担になるが、売却時には、それらの費用については、有益費として国の基準に従い、売却価格から減額することも考えたいと、近財局は縷々説明する。が、貸付料が高いとの不満は延々とつづく。

7 やっと大阪府から条件付きの認可が下りる。資金、カリキュラム、教師の配置等々、学校法人開設にかかわるあらゆる点で条件が付いての、特例的な条件付きの認可である。(2015/1/27)

8 認可が下りたので契約がスムーズに進んだのかといえば、さにあらず。学園側の特例要求はますますヒートアップ。鴻池、平沼、鳩山邦夫等の自民党の国会議員にしつこく陳情し、値下げ交渉助力を依頼。各議員の秘書がやむなく、近財局に電話で依頼。当然、効果はなし。

9 そこで新手を考え出したのか、地盤が軟弱で、補強のためのくい打ち工事に高額出費を余儀なくされているとして、その費用と貸付料の減額を近財局に要求。近財局は軟弱地盤につき、大阪航空局に問い会わせたところ、担当業者は、何を基準にして軟弱だといってるのかが不明なので、答えようがないと回答。学園側の業者にも聴取したところ、この地盤の軟弱性は地質そのものに由来するものであり、国には責任はないと思うと回答。近財局は、もし仮に軟弱地盤の補強費用が発生した場合は、売却時に有益費として考慮するが、貸付料は減額しないと学園側に回答。

10 学園側は貸付料の減額を執拗に迫り、また契約不履行に際しての違約金条項を認めず、契約になかなか応じないという状況が続く。近財局はやむなく契約解除手続きを開始すべく、必要書類を学園側に示し、署名、捺印を求めたが、学園側はこれにも応じない。

11 すったもんだの挙げ句、学園はやっと契約書を交わすことに同意するが、正式な契約は公証人役場で公正証書が作成されるまでは成立しないが、契約未成立にもかかわらず、学園側はカギを壊して、勝手に土地に侵入し、業者にも入らせていた。その違法行為を指摘されても、学園側は完全に開き直って、近財局を激しく攻撃し続ける。この大騒動の渦中に、籠池氏は契約書にやっと押印した。(2015/5/27)この攻撃(口撃)の一部を最後に紹介します。

12  学園側はやっと公証役場に行くことにも同意し、学園側と国の代理人とで本町公証役場に出向く。しかし、ここでも学園側は国の代理人が気に入らない、○○(その場にはいない職員の名前)を寄越せとわめきちらし、公正証書作成には至らず。公証役場からは、「このようなことは前代未聞。余り大きな声を出されると困る」と抗議あり。(2015/6/2)

13 国の代理人を変え、再び公証役場に出向く。籠池氏は政治的圧力をかけるつもりか、昨日、自民党の谷垣幹事長にも会って、支援を要請したと語る。(6月4日には、柳本卓治参議院銀の秘書より、値引き依頼の電話あり。)近財局の示した条件に則った証書の作成にこぎ着けたものの、証書作成のための謄本作成手数料等を学園側が負担することに納得せず、国も半分払えと要求する。(2015/6/8)

14 名神高速の地下の排水溝から、雨水が学園側土地に流入するとの苦情あり。近財局が調べたところ、2カ所認められたが、逆のケース(学園から高速道路へ)も確認。この対策も考慮の対象。(2015/7/9)

15 再三再四、値下げ要求が続く。来年4月の開校が遅れたら国の責任。損害賠償請求をすると脅す。

16 昭恵氏が学園で講演し、名誉校長を受諾。(2015/9/5)

17 昭恵夫人付き職員、谷氏が借地契約について財務局に問い合わせる。(2015/11/12)しかしこの後も、条件には変化なし。

18 ところが学園側にとっては、突如、暁光がさすかのような事態が発生した。地中から新たにゴミが見つかったからである。学園側は、さっそく近財局に撤去費用と値引きを要求。しかし近財局からは予算もなく、売却時の有益費として考慮するとの返答しか得られず。(2016/3/11)

19 新たなゴミが見つかっても貸付料の減額が実現しないからか、学園側は土地購入へと方針転換。近財局はもともと土地は売却する方針であり、これまでも何度も購入を進めてきたが、学園側は、銀行からの借り入れが不可能な状況ゆえに購入はできないと答えてきた。ここにきて突如購入に方針転換したのは、この土地をめぐる様々な悪条件をネタに、タダ同然で土地を巻き上げようとの魂胆であったと思われる。

20 近財局は土地を売却するに際しては、「売却後は双方一切の債権債務を有することなく、損害賠償請求も行わないとの契約書に合意すること」を絶対条件とする方針を堅持する。学園側は、損害賠償請求をしないという条件で土地を購入する場合は、「限りなくゼロに近い金額」でなければならいと主張。

21 近財局は、ゼロは無理だと回答したものの、売却する以外にこの超異常なクレーマーから解放される方法はないと判断したのか、大幅に減額して1億3400万円で売却することを決定。ただし売買契約締結後は一切の要求もお受けすることはない前提で決定した額であり、更なる要求が出されるならば、締結そのものを見合わさざるをえないと、強く学園側に要請している。

22 この金額が安すぎるといわれているが、元の金額が10億円近い額であったので、確かに安いのは安い。しかし学園が脅しとして使ってきた損害賠償請求の内容からすれば、安いとはいえないはずです。学園は以下のような理由を挙げて損害賠償請求をちらつかせてきました。
 ・汚染土壌対策費(公募時に明示)
 ・もともとあった地下に埋設されているゴミ(産業廃棄物)の撤去費用(公募時に明示)
 ・資料に示されていた以外の場所から、新たにゴミが見つかり、この撤去費用も加算。
 ・資料に示されていた以外の場所から土壌汚染(カドミウム?・・・未確認)も見つかったと主張。この対策費用も加算。
 
・軟弱土地の補強費用(書き忘れで追加)
 ・工事の遅れによる開校の遅延に対する損害賠償も加算。
 ・工事が遅れた結果、熊本地震に遭遇し、工賃、資材費が高騰したことで受けた被害に対する損害賠償も加算。

 ざっと挙げただけでも、以上のような損害が対象になっています。その大半は、学園側の身勝手な要求が招いたものだとはいえ、売却以外に、超異常な学園との関係を断つ方法はありえなかったことは明白です。もしも提訴された場合、その裁判への対応に費やされる人的、経済的被害を考えれば、1億3400円は決して安くはなく、むしろよくぞこの額で学園を説得したとさえ思われます。

 以上、財務省・森友学園決裁文書の、 
「1.貸付決議書1「普通財産決議書(貸付)森友学園との交渉記録」の本文4分冊の内の1分冊と半分(1.5分冊)、及び読売新聞の「森友」交渉記録の要旨を基に書きました。交渉記録は記述が具体的で、読みだすと面白くて止まらい状態になりますが、時間に制約があり、一部に目をとおしただけですが、それでも、マスコミや野党の主張とは全く真逆の真相満載です。テレビ朝日のキャスターも文書を読み、安倍総理夫妻の白が証明されて、野党にとっては藪蛇だと語っていたらしいことがネットに出ていましたが、ネットでも公開されているこれらの文書を野党はどこも全く読んでいません。マスコミもごく一部を除き、文書を一文字も読まずに、平然と従来どおりの主張を繰り返しています。NHKも全く同様です。文書を全部出せ出せと要求しながら、せっかく提出され公開されている文書を野党もマスコミも全く読まず、従来通りの主張を繰り返していることには、怒りを超えて、唖然としています。

 紛糾の素にもなっていた書き換えについても、決裁文書書き換え前・後も対照的に公開されていますが、一部に目を通した印象では、その大半は語句や表現の訂正です。ただし、一部目を通した段階で最も目に付く書き換えは、森友側から繰り返しなされた損害賠償請求に関する記載がごっそり削除されていたことです。関連記述が全て削除されているのかどうかまでは未だ確認していませんが、この記述の削除の理由としては、学園側からの損害賠償請求の脅しに屈して、大幅値引きしたとの印象をもたれないようにするためだったのではないか。それ以外に理由は見つかりません。

 学園側にとっては有利な削除(書き換え)ですが、この削除からも、近財局が学園側からの損害賠償請求への対抗策として、大幅値引きによる売却に応じたことがより鮮明になっています。これ以外に、籠池夫妻による執拗な攻撃に対抗する方法があるのであれば、その方法を示すべきでしょうね。

 つまりこの問題は、籠池夫妻という史上他に例のないような超異常なクレーマーによって引き起こされたものであり、被害者は死者を含む近財局の職員、執拗な陳情を受けた政治家、そして我々国民です。夫妻は公的なものを、きわめて不当な私的利益追求のために利用し尽してきました。夫妻への対応のために費やされてきた膨大な時間と業務量は全て税金によって賄われています。夫妻はまるで自分たちは被害者であるかのような態度を示していますが、彼らは公に対する攻撃者であり、まさに人間公害そのもの。

 昭恵夫人はよくもこんな人物の要請を受けて名誉校長を引き受けたものだと、夫人の人を見る目のなさ、趣味の悪さには驚くしかありませんが、政治的責任を問うべき質のものではないことは言うまでもありませんし、値引きには一切影響を与えていないことも明白です。

 ちなみに陳情を受けた政治家秘書による籠池夫妻評を紹介します。(読売の「要旨」より)
 鴻池議員秘書:「4月には日参状態。」大阪の地元ゆえ、理事長は毎日事務所に出向いていたらしい。
 平沼議員秘書:「理事長は個性的な者なので、財務局の皆さんに失礼なことを言っているのではないか。」と心配。
 柳本議員秘書:「こいう商売をしているので、持ち込まれた話は聞かなくてはならないが、毎日のように電話してきて困惑している。」

 最後に、籠池詢子氏の罵詈雑言をご紹介します。夫人の罵詈雑言は無数に記録されていますが、いずれも長文ばかりでそのまま全てを紹介するのはスペース的に難しいので、以下の短文を一例としてご紹介します。

2015/5/27の応接記録より

籠池氏によるもっと下げろの要求が主たるテーマであったが、淳子氏はいつも罵詈雑言をわめきちらす役回りになっています。書き留められているその一部を紹介します。近財局の小池部長に対し、終始以下のような罵詈雑言が浴びせられたという。

 あんた、アホやろ。こんなで部長やから。
 あんたも、前西、三好と一緒や。(いずれも職員の名前)
 おい、部長。
 こいつ。
 あんたら、(器が)ちっちゃい。
 東京の人間は、皆エリートやから、人間の心が分からんのや。血も涙もない。
 冷血や。
 なんで、にやけて話しているんや。

 
 森友文書を全く読まず、この夫妻を被害者として擁護する人たちが今なお存在しますが、資料を読まずに記事を書き、発言する、記者やキャスターや文筆家や評論家や野党の政治家たちは、社会に害毒を流すだけですので、この世から消えるべきだとさえ思います。

続編:
森友文書と財務省

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